気をつけるべき子どもの遠視
治療が必要な子どもの遠視。
実は「遠視」にも気をつける必要があります
子どもの視力といえば、“近視にならないか”ということだけを心配する親御さんが多いのですが、実は「遠視」にも気をつける必要があります。そもそも、乳幼児の時期は、まだ「眼軸(目の奥行きの長さ)」が短いため、誰でも遠視の状態です。成長するにしたがって眼軸が伸びてきて、「正視(近視や遠視ではなく、正常な視力で見えること)」や「近視」になるのですが、なかには「遠視」のために、ものがはっきり見えない子もいます。子どもの目の診療に詳しいCS眼科クリニック院長の宇井牧子先生に、気をつけたい子どもの遠視についてお話を聞きました。
「“近視は近くがよく見える目で、遠視は遠くがよく見える目”だと思っている人も多いのですが、遠視は“遠くのものも近くのものも、目の力でピントを調節しないとはっきり見えない”状態です。子どもに強い遠視が起きてしまう原因は、眼軸が短いためで、遺伝的な可能性以外はまだよくわかっていません。遠視があると、無意識にピントを合わせようとするために、“内斜視(いわゆる寄り目)”になるケースもあります。また、遠視が強いせいで、しっかりピントが合った状態にならず、ものがクリアに見えていない子どもは、網膜への刺激が不足して視力が十分に発達しなくなり、ピンぼけによる弱視になってしまうこともあるのです」
生まれたときから視力が悪い子どもは、それが不便だと自覚できないので、生活のなかで見えにくいそぶりをすることがありません。そのため、視力の異常に気づくのが遅れてしまうケースが少なくないのです。
特に、子どもの場合はピントを合わせる調節力が強いために、生活するのには問題ない程度に見えていることもあります。ところが、視力の検査をしてみると、しっかり見えていないとわかることがあります。早いうちに遠視があることに気づいて適切な治療を始めれば、視力が回復する可能性が高まるので、やはり視力の検査が必要なのです。
3歳になったら眼医者さん
宇井先生は、「遠視などの視力の異常がないかどうか確かめるためには、特に心配なことがなくても、3歳になったら一度は眼科──できれば小児眼科の診療を行っている眼科医を受診して、視力の検査を受けてほしい」と強調します。「現在の乳幼児健診では、3歳児健診のときに簡易検査キットを使って自宅で視力の検査を行い、結果を自己申告するシステムです。ただし、この検査で視力の異常を正確に検出することは難しく、異常があってもすり抜けてしまうケースも多いのです。
その次は、就学前健診で視力のチェックを行います。そこで弱視などが見つかってから治療を開始しても手遅れではないものの、早く見つけて治療を始められれば、治療の有効性は違ってきます。就学前の子どもは、自分がよく見えていなくても自覚できないので、なかなか自分から視力のことを訴えません。まわりの大人の働きかけが必要ですね」
近年は、視力検査をしなくても、検査機器を使ってある程度の近視・遠視・乱視の有無を知ることができます。子どもはただ座って前を見ているだけで、カメラで写真を撮るような検査です。目に触れることもなく、ピヨピヨという音が聞こえている間に、短時間で目の屈折を簡単に検出することができます。乳幼児の定期健診のために、このような検査機器を導入する自治体も増えてきているものの、全国的にはまだ十分とはいえません。“3歳になったら眼医者さん”と覚えておきたいものですね。
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