人類と近視の長い長〜い闘いの歴史

日本にメガネを伝えたのはフランシスコ・ザビエル!?

日本にメガネを伝えたのはフランシスコ・ザビエル!?
画像素材:PIXTA

メガネが日本に上陸したのは、16世紀のこと。

近視の対応策といえば、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか?
メガネ? コンタクト? はたまたレーシックでしょうか。

昔から近視という病気に悩まされてきた人類は、遠くのものが見えにくくなった目をフォローするため、いろいろな方法を模索してきました。
近視への対応策はレンズを使った矯正からはじまり、様々なものが発明・改良されてきました。

そのなかには、面白くも深い、人類の近視との闘いの歴史があります。
では、早速、近視矯正&治療の世界を見ていきましょう。
日本にメガネを伝えたのはフランシスコ・ザビエル!?
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■13世紀〜15世紀 メガネの誕生と普及

一対のレンズを組み合わせたメガネは13世紀末に初めて現れました
最初は凸レンズを用いた老眼や遠視用のもので、15世紀にはヨーロッパ中に広まります。印刷機が発明され活字文化が急速に進んだ結果、メガネを必要とする人が増加したという背景があるようです。さらに、15世紀には、近視用メガネが発明されます。

そして、メガネが日本に上陸したのは、16世紀のこと。
日本に初めてメガネをもたらしたのは、なんとキリスト教宣教師のフランシスコ・ザビエル。

ザビエルは、1549年、周防(山口県)の大名・大内義隆に、ヨーロッパではすでに普及しているメガネを贈りました。数年後には織田信長も、外国人宣教師がかけていた近視用メガネに驚いたという記録が残っています。
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■19世紀 コンタクトレンズの発明

目に直接装着するコンタクトレンズは、19世紀前半にイギリスで考案されました。ただし初期のコンタクトレンズは大きく、装着感が非常に悪かったため、とても実用に耐えられるものではなかったそうです。

装着感を改善したレンズが開発され、1930年代にはコンタクトレンズが一般に普及しはじめます。1960年にはチェコスロバキア(当時)の学者が、ソフトレンズを発明。使い捨てコンタクトは1988年にアメリカで認可されて以降、急速に広まりました。また、手術で眼球内にコンタクトレンズを埋め込むICL(有水晶体眼内レンズ)は、1949年には最初の治療例が見られます。
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■20世紀末〜21世紀 近視治療の発展

レーザー照射で角膜のカーブを変えて光の屈折力を調整するレーシック治療は、1990年にギリシャの医師が考案。日本では2000年代に入ってから急速に広まります。
また、就眠時に特殊なレンズを装用することで日中は裸眼で過ごせるオルソケラトロジーは、1950年代頃から臨床的な試みが実施され、1989年にアメリカFDAへ認可を受け世界各国に広まりました

■現在 近視進行抑制薬の普及

近視のほとんどは眼軸長(眼球の奥行き)の伸展が原因(軸性近視)ということがわかって以降、成長に伴う眼軸の過剰な伸びを抑える点眼薬が使われるようになりました。
アトロピンが近視進行抑制に有効ではないかという研究は1960年代頃からおこなわれていましたが、 0.01%の低濃度アトロピン点眼薬が近視の進行が有意に低く副作用も最低限であるという実験結果が2012年に発表されて以降、 近視進行抑制薬として急速に普及しています。

ざっと駆け足で見てきた近視矯正および治療の歴史、いかがだったでしょうか。
人類と近視との闘いは、現在もまだ続けられているということがお分かりいただけたと思います。
500年以上前に発明された近視メガネで矯正しながら、最新技術のオルソケラトロジーや点眼薬・低濃度アトロピン積極的に活用する。
今のところ、これがもっとも正解に近いようです。

監修:新見浩司(兵庫県で新見眼科など4軒の眼科専門病院を運営する医新会理事長)

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