30年後、世界で10億人が失明する?近視をほったらかしたらヤバイ理由(後編)

「近視」はパンデミック!
30年後には世界人口の約半数が近視になるってホント!?

「近視」はパンデミック!30年後には世界人口の約半数が近視になるってホント!?
画像素材:PIXTA

パンデミック。

病気の世界的な大流行を意味するこの言葉は、コロナが世界的に蔓延した昨今、よく聞かれるようになりました。
そして実はコロナだけでなく、いま密かにパンデミックが進行している病気があります。それは、「近視」です。

その根拠となるのが、以前にも紹介した2016年に、オーストラリアのブライアン・ホールデン視覚研究所が発表した調査結果です。
ここのところ近視と診断される人ははっきり増加傾向にあり、このままいってしまうと「約30年後の2050年には、世界の全人口の約半分が近視になる」とされています。
さらに、「全人口の10パーセントは、近視のなかでも特に重症で、失明につながりかねない“強度近視”になる」という予測もあります。
医学博士・眼科専門医 木下望先生によると、この状況は“パンデミック”と言ってもおかしくはないのだそうです。

過去50年間で3〜4倍まで増加しています。

わずか数ヶ月間で世界中に広まったコロナと比べると、近視の増加はゆっくりとしたペースで進んでいるので、実感がわかない人も多いかもしれません。
また、世界で広まっていると言っても、自分たちが住む日本には関係ない、世界のどっかでおこっていることでしょ?と、コロナが広がりだした頃のような思いを抱く方も少なくないかもしれません。
でも、木下先生はこんなお話をしてくれました。
「香港、韓国、台湾、シンガポールなどの東アジア地域で、近視は過去50年間で3〜4倍まで増加しています。日本にはこれに相当する統計が残念ながら存在しないのですが、同様の増加傾向にあることは間違いありません。調査対象1400人という規模の小さいデータですが、慶應義塾大学が2019年に都内の小中学生に対しておこなった調査によると、実に小学生の76.5パーセント、中学生の94.9パーセントが近視だったそうです。早いうちから受験勉強に取り組んできた都内の小中学生に対する調査ではあるものの、驚くべき数字です」

もともと日本を含むアジア人は欧米人と比べ、近視の人が多いことも知られています。
だから、「今から約30年後の2050年には、世界の全人口の半分が近視になる」という予測をアジア人に限定すれば、その割合はさらにずっと高くなると考えられます。
このままのペースで近視患者が増えると、30年後にはアジア人のほとんどが、メガネやコンタクトに頼らないと日常生活が送れないようになるかもしれないのです。

近視が発病する原因は、先天的な「遺伝」と後天的な「環境負荷」があげられます。
この50年間で近視の人ばかりがモテるようになり、子孫を多く残すようになったとは考えにくいので、近年の爆発的な近視増加は遺伝によるものではなく、明らかに後天的な環境負荷が増しているからだと考えるべきでしょう。

幸い、21世紀に入ってから目の研究は大きく進み、近視のメカニズムや原因、また近視の進行を抑制する方法についても、いろいろなことがわかってきています。
いま私たちにできることは、こどもたちの近視の発症を止める、あるいはなるべく遅らせること。
そしてもし発症してしまったとしても、進行を抑える努力をすることで、30年後の恐ろしい予測を「実際には起こらなかった未来」とすることなのです。

〈参考文献〉
木下 望 『近視から子どもたちの目を守れ! 近視と闘い続けた眼科医からのメッセージ』(2021年、幻冬舎)
平岡孝浩・二宮さゆり編『クリニックで始める 学童の近視抑制治療』(2021年、文光堂)

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