視力が悪い人はなぜ人相が悪く見える? 視力が子どもの人間関係に影響を及ぼす
視力が子どもの人間関係に影響を及ぼす?!
物がよく見えないと、ついつい目を細めてしまう。
これは、子どもも、大人も同じです。目を細める仕草は、大人であればときに思慮深い印象を人に与えたり、渋い表情として異性から好反応を引き出したりすることもあるかもしれませんが、子どもの場合は百害あって一利なし。
気難しそうな表情は人をはねつけ、子どもの交遊範囲を狭めてしまう可能性もあります。
それに、先生が板書したり、遠くからボールが飛んできたりするたびに目を細めなければならないとしたら、子どもの勉強や運動のできを左右してしまう可能性もあります。では、なぜ、目を細めてしまうのでしょうか?
写真が趣味の方はよくご存知かもしれませんが、カメラのレンズには“絞り”という機能があります。
何枚もの羽根を組み合わせた構造の絞りは、大きく開いたり小さく閉じたりすることで、レンズに入る光の量を調整しています。
スマホについている全自動のカメラは機械が勝手に考えてくれますが、写真が好き人はそれでは飽き足らず、マニュアルのカメラで絞りとシャッタースピードを調整します。
写真好きがわざわざ絞りとシャッタースピードを調整するのは、絞りの大きさによって“被写界深度”が変わるためです。
被写界深度とは、
ピントを合わせたい部分の前後で、実際にピントが合っているように見える範囲のこと。被写界深度を“浅く”設定すると、被写体にピンポイントでピントが合い、手前や背景のものはボケて写ります。
モデルさんの顔だけピントが合い、背景は淡くボケた写真などは、被写界深度を浅く設定しています。
逆に、手前のものから遠くのものまで、全体的にピントが合っている写真は被写界深度が“深く”設定されています。
背景のお城からひな壇に並ぶツアー客全員の顔にまでピントが合っている記念写真などは、被写界深度が深く設定されているわけです。人の目はカメラの構造とよく似ています。
カメラが絞りによって調整する被写界深度は、目の場合、通常は黒目と呼ばれる虹彩が調整しています。
裸眼だと人相が悪くなりがち
虹彩も絞りと同様、目に入ってくる光の量を調整する役割を担っていて、光の量が多い明るい場所では虹彩が閉じ、黒目の中心の瞳孔が小さくなります。逆に、光の量が少ない暗い場所では虹彩が開き、瞳孔は自動的に大きくなるのです。
視力が悪い人は、裸眼だと人相が悪くなりがちです。
目を細め、眉を寄せてものを見ようとするからです。
これは、瞳孔をまぶたで覆って小さくすることにより、カメラでいうところの被写界深度を深くし、ピントの合う幅を広げようとするからです。
実際、近視の人でも目を細めたり、指で作った小さな穴からのぞいたりすると、ピントが合ってものが見えやすくなります。
特に子どもに関しては、こうした仕草を近視発見のサインとして見逃さないようにするべきだと話すのは、医学博士・眼科専門医の木下望先生です。
「子どもの近視は軸性近視、すなわち眼軸長(眼球の奥行き)が長く伸びてしまっていることが主な要因であることが明らかになっています。眼軸長が伸びると、遠くをみるときに眼球の一番奥にある網膜ではなく、その手前で像が結ばれてしまうためピンボケになりますが、目を細めることによって、ある程度ピントの幅を広げ、なんとかものが見えるようになります。子どもの近視発症を保護者が見つけてあげるためには、ときどき遠くの看板の文字を読ませてみたり、簡易的なものでいいので視力検査表を家に貼っておいたりすることが有効ですが、目を細めるといった仕草にも注意してあげるといいと思います」
子どもの人相が変わった、目を細めるようになったと思ったら要注意。
視力の検査をし、しかるべき対応をしてあげることをお勧めいたします。
〈参考文献〉
木下 望 『近視から子どもたちの目を守れ! 近視と闘い続けた眼科医からのメッセージ』(2021年、幻冬舎)
平岡孝浩・二宮さゆり編『クリニックで始める 学童の近視抑制治療』(2021年、文光堂)
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