眼科医に聞く目のウソ、ホント。メガネをかけると目が悪くなる?
おしゃれの一環としてメガネが楽しまれる傾向
最近は昔ほど“メガネ姿は不恰好”という見方はされなくなり、大人の世界ではむしろおしゃれの一環としてメガネが楽しまれる傾向もあります。でも子どもに限って言えば、“できるだけメガネはかけさせたくない”と考える保護者の方が多いようです。
邪魔なメガネをかけていると不活発になりそうだという心配もあるでしょう。
それに、近視がはじまった子どもに早くからメガネをかけさせると、かえって視力を悪くするという説を信じている方も多いようです。
メガネをかけると余計に目が悪くなるってホント?
そんな疑問を、二本松眼科病院副院長の平松類先生にぶつけてみました。「そんなことはありません。年齢が低いほど近視の進行は早いので、メガネをかけさせたらもっと近視が進行したという錯覚が起こりやすいのだと思います」
平松先生は、子ども服に例えてこんな話もしてくれました。
「子どもの体格にぴったりの服を買って着させたけど、すぐに大きくなってその服は着られなくなってしまったとします。子どもにぴったりのサイズの服を着させたから、体が大きくなったわけではありません。たまたま成長期だったからです。メガネも同じこと。子どもに早くからメガネをかけさせたからといって、さらに近視が進むのはメガネのせいではなく、たまたま近視が進行しやすい時期だったから。我慢して我慢して近視がかなり進み、成長してからメガネをかけさせたとしましょう。近視がそれ以上は進まなかったら、『我慢した甲斐があったね』と思うかもしれませんが、それはたまたま近視の進行が収まる年齢に到達していただけなのかもしれないのです」
ただし平松先生は、確かにメガネをかけるとより視力を悪くするという学説もあって、いまだにはっきりとした結論は出ていないのだということも話してくれました。
だから「少しでも視力が落ちたら、絶対すぐにメガネを作るべき」「いや、メガネは絶対にかけさせず、できる限り我慢させるべき」といった両極端の考えには走らない方がいいのだそうです。
「私は、『学校で黒板の字が見えないようなら、きちんとメガネをかけたほうがいいですよ』という表現で伝えるようにしています。実際、メガネをかけさせなかったことで授業に遅れる子どももいると聞いています。メガネが視力を余計に低下させるという説が確実ならまだしも、どちらとも言えない状況ですので、メガネをかけさせずに授業に遅れるというデメリットを子どもに与えてしまうのはいかがなものかなと思います」(平松先生)
しかしそれとはまったく別の話で、絶対にメガネをかけなければならない子どももいるのだそうです。
それは近視ではなく、遠視の子ども。
遠くが見えるというイメージの遠視ですが、強い遠視は遠くにも近くにもピントが合わず、その状態で放置すると子どもの目は成長しなくなってしまうのだとか。
「そもそも生まれたばかりの赤ん坊の目は、0.1も見えていません。3歳くらいから1.0が見えるようになりますが、まだ物が立体的には見えていません。7〜8歳になると立体視ができるようになり、12歳頃になってやっと目は完成します。その期間には目をきちんと成長させてあげなければならないので、遠視と診断されたら必ずメガネをかけさせることを忘れないでください」(平松先生)
遠くのものだけが見えにくくなり近くのものは見える近視の場合、すぐにメガネをかけさせてあげるかどうかは、デメリットと天秤にかけての自己判断。
それに対し、遠くも近くも見えにくくなる遠視は目の成長を阻害してしまうので、選択の余地なく急いでメガネを作ること。
どうか忘れないようにしてください。
“メガネキャラ”
ちなみに、20世紀を代表するロックスター、ジョン・レノンは“メガネキャラ”としても有名です。でもジョンは1960年にビートルズの一員としてデビューしてしばらくの間、メガネをかけていませんでした。
彼はもともと非常に視力が弱いのですが、メガネをかけた姿は不格好だと考え、常に裸眼でぼやけた視界の中で演奏していたそうです。
そんなジョンが人前でメガネ姿を初披露したのは、1967年公開のコメディ映画『ジョン・レノンの僕の戦争(原題・How I Won The War)』の中。
風変わりな兵士役で出演したジョンは、役作りのために忌避していたメガネをかけます。
このとき、ジョンのアイデアも踏まえて選ばれたメガネは、NHS(National Health Service=国民医療保険制度)の官給品でした。“ゆりかごから墓場まで”という手厚い福祉政策をとっていた当時のイギリスでは 、0.1以下の近視患者に国が無償でメガネを支給していました。
無料のメガネは飾り気のない大量生産品だけにかなり野暮ったかったのですが、ジョンの丸メガネスタイルは大衆に大受け。気をよくしたジョンはそれ以降、おしゃれアイテムとしてメガネを愛用するようになったそうです。
最近は、かわいらしい子ども用のものもたくさんあるので、「メガネなんていや」っていう子どもには、とりあえず一緒にメガネ屋さんに行ってみて、気に入るものを選ばせてみるのもいいかもしれませんね。
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