読書の秋 目が悪くならない本の読み方、三つのポイント

スマホやゲームは悪だけど、本は正義? 
正しい読み方を知らないと、読書でも目はどんどん悪くなる

スマホやゲームは悪だけど、本は正義? 正しい読み方を知らないと、読書でも目はどんどん悪くなる
画像素材:PIXTA

読書の秋、

そしてこれからはじまる冬休み、子どもにはたくさん読書をしてもらいたいですよね。
目を悪くするので、スマホやゲームはなるべくやらせたくない。でも、本はしっかり読んでほしい。大人はそんなふうに考えがちです。
しかし実は、読書もスマホやゲームと同様、近視の原因となりやすいもの。
読書のメリットを誰もが認識しているので、スマホやゲームと違い、本はあまり悪者にされないだけなのです。

できる限り目を悪くしないような、正しい読書の仕方を子どもにしっかりと伝え、身につけてもらいましょう。
今回はそんなテーマです。正しい読書の仕方を話す前に、ちょっと近視に関する昔話を。

“近視の原因は近くを見すぎること”

最初にそう気づいた人は、16〜17世紀に活躍した天文学者ヨハネス・ケプラーでした。

4歳でかかった天然痘の後遺症により、ケプラーは幼少期から視力に問題がありました。成長して数学と天文学を研究するようになっても、目が悪くて夜空の星を思うように観測できないというジレンマが大きかったようです。
そこで彼は自分で天文観測はおこなわず、他の人の観測データに基づく机上の緻密な計算を追求。のちに「ケプラーの法則」と呼ばれることになる天体の運行法則を解明し、現代に続く物理学と天文学の基礎を構築します。

ケプラーの場合、近視発症のきっかけは天然痘でした。でも、空も見ずにひたすら机にかじりついて勉強したことが、彼の目をさらに悪くしたというのは想像に難くありません。
本人もきっと実感していたのでしょう。彼は目と視力について興味を持ち、研究をはじめます。
そして自身の経験といくつかの実験と計算により、近視というのは網膜の手前で焦点が合ってしまうことが原因であると突きとめます。さらに彼は、網膜の手前で焦点を結んでしまうようになる原因として、読書や著述の際に目を近づけすぎるためではないかという仮説にたどり着きました。

そんなケプラーが活躍した時代から400年を経た現代。
近視のおもな原因は、眼軸長(眼球の奥行き)の伸展によるものであることが明らかにされています。

また、近くのものにピントを合わせ続けると、やがて眼軸長が伸びて近視になってしまうというメカニズムも解明されました。

目から本までの“距離”

そうした理論に基づき、近視の進行を防ぎながら読書する方法も明示されています。
教えてくれたのは、二本松眼科病院副院長の平松類先生。
平松先生によると、読書の際にまず気をつけるべきポイントは、目から本までの“距離”なのだそうです。
本までの距離が近いほど目には負担がかかるので、30センチ以上離すのが鉄則です。

簡単そうですね。子どもに「30センチ以上離しなさい」と言えばいいのですから。
でも平松先生は、それでは不十分だと言います。理想の距離を数字で伝えるだけでは、子どもは“離しているつもり”になりがちで、実際にはもっと近づけていることが多いというのです。
「目安となる具体的なものを用意しておくといいでしょう。身近なもので言えば、A4用紙の縦の長さがおよそ30センチ。子どもはA4のノートを使っていることが多いので、ノートを目に当てて『このくらい離しなさい』と伝えるのがいいと思います」
なるほど、それなら分かりやすそうです。
30センチの長さにしたヒモを作り、読書をする子どもの横に置いておくのも良い方法です。

距離の次に重要なポイントは“明るさ”。
照明が暗すぎると本の字が読みにくく、結果として本に顔を近づけてしまうことになります。
また逆に明るすぎるのもNG。ギラギラとした太陽の光が直接当たる窓際などでの読書は、目の負担を増加させてしまいます。
通常の家の部屋のライトは十分な明るさがあるので、本のページにきちんと当たっていればOK。でも、天井に設置された家庭の電気だと、手元の明るさにムラができがちで、本には十分な光が当たっていないこともあるそうです。
だから読書灯があればベターでしょう。

距離の話と連動しますが、正しい本の読み方三つめのポイントは“姿勢”です。
猫背の姿勢で下向きになると、本と目の距離は近くなってしまいます。
「おうちで本を読むときは、環境が整っていないことが多いようです。大人も座る食卓の椅子や机などは、子どもの体格とのバランスが合っておらず、結果として背中を丸めがちになります。理想は、読書時に自然と良い姿勢になれる机と椅子。子どもの成長に合わせて高さを調整できるものを使うのが一番いいですね」
距離、明るさ、姿勢
この三つのポイントで、目が悪くならない正しい本の読み方を、お子さんに伝えてみてください。

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