子どもの近視の3つのサインを見逃すな

自分は目が悪くないからといって、わが子が近視にならないとは限らない⁈
子どもの近視の3つのサインに要注意

自分は目が悪くないからといって、わが子が近視にならないとは限らない⁈ 子どもの近視の3つのサインに要注意
画像素材:PIXTA

わが子も大丈夫

毎日を一緒に過ごしているわが子。知らないうちに目が悪くなって、ある日突然、学校からもらってきた健康診断の結果の紙に“視力低下の疑いがあります。眼科を受診して、詳しい検査を受けてください”と書いてあってびっくり! あわてて眼科に連れて行ったら、本当に視力が落ちていた、という親御さんも少なくないのではないでしょうか。特に、自分が幼少期からそれほど目が悪くなかったために、わが子も大丈夫と思っている親御さんは、健康診断の結果を見て驚きます。

「小学校低学年までの小さいお子さんの場合、近視の相談で来院する患者さんの受診のきっかけで最も多いのは“学校の健康診断で指摘されたから”というものです」

子どもの視力の診療に詳しい医学博士・眼科専門医の木下望先生も、上記のように指摘しています。

高学年になれば、「席替えしたら後ろになって、黒板見えねぇし」などと訴えるかもしれませんが、そもそも1年生くらいでは、黒板がはっきり見えているのかどうかについて、自分で判断するのは難しいでしょう。そして、子どもがテレビやマンガを見るときにやたらと目を近づけるようになっても、親御さんは「目が近すぎる!」と注意する程度で、それが近視のサインだと気づかないことも多いと思われます。

木下先生によれば、子どもの近視が疑われるサインは、主に下の3つ。
子どもの近視が疑われるサイン
1.遠くを見るときに目を細めて見るようになった。
2.テレビや本を見るときに目を近づけて見るようになった。
3.教室の黒板や離れた掲示板などが見えにくいと訴えるようになった。
実は、木下先生自身も近視であり、初めて自分の子どもに近視の兆候が見つかったときの衝撃を忘れられないといいます。
「長男が、当時住んでいた自宅の窓から私の勤務先の大学病院の大きな看板の文字がぼやけて見えない、と言い出したんです。まだ5歳だったので、私も妻もショックが大きかったですね。というのも、近視を発病して年齢が早いほど進行も早く、将来、“強度近視”といわれる重症の近視にまで進む危険性が高いからなんです」(木下先生)
子どもが近視になりやすい要因は、“遺伝+環境”と言われています。
《子どもが近視になりやすい要因は、“遺伝+環境”》

① 両親またはどちらかの親が近視である

② 外遊びの時間が短い(室内で目を近づけて遊ぶ時間が長い)

③ 姿勢が悪く、本やスマホ、タブレットを見る時の距離が近い(30cm未満)

④ ゲームやスマホの液晶画面を見ている時間が長い

これらの要因に思い当たることが多かったら、近視にならないように予防することが重要です。というのも、すでに別記事で解説した通り、子どもの近視のほとんどは「眼軸長」が長くなったことによる「軸性近視」であり、いったん伸びた「眼軸長」は縮めることはできず、治療してそれ以上伸びないようにするのが精一杯だからです。

「お子さんの近視を予防するためには、①遺伝は仕方のないこととして、上の②〜④の逆を実行すること。そして、近視の兆候に早く気づくためには、3つのサインを見逃さないことに加え、家庭でも視力検査表を使って定期的に視力検査をすることをおすすめします。月に1回程度、測ってみて、近視の兆候があったら、眼科を受診するといいでしょう」(木下先生)
最近は、通販サイトでも手軽に「視力検査表」を購入することができます。
眼科などでは5mの離れたところから表を見ることになりますが、その距離が取れない場合、家庭向きに3m用の表も市販されています。あとは、カレースプーンなどで片目を隠せば OK。ただし、あまりひんぱんに検査をすると、お子さんが検査表をすっかり暗記してしまう可能性もあるため、意味がないのでご注意を!

〈参考文献〉
木下 望 『近視から子どもたちの目を守れ! 近視と闘い続けた眼科医からのメッセージ』(2021年、幻冬舎)
平岡孝浩・二宮さゆり編『クリニックで始める 学童の近視抑制治療』(2021年、文光堂)

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