スマホによる寄り目の固定化はどうやって防ぐ?

CS眼科クリニックの宇井牧子先生に、その実態をうかがってみました。
「最近、スマホに関連するお子さんの目の相談が多くなっていますし、スマホを長時間使うようになった小学校高学年くらいの子どもたちに、この“スマホ内斜視”が増えていることは事実です。正式にいうと、スマホなどのデバイスを近い距離で見続けたことによる“急性内斜視”です。
“内斜視”というのは、ものを見ようとするときに片方の目が内側に寄ってしまう、いわゆる“寄り目”が固定化した状態です。原因がはっきりしないものが多いのですが、この“スマホ内斜視”はデバイスを近くで見ることによって起きる急性の内斜視です。スマホの普及に加えて、コロナ禍でオンライン授業にスマホやタブレットを使う機会が増え、家にこもってスマホゲームなどで遊ぶ時間が長くなったことと関係しているのでしょう」
スマホ内斜視という概念は、2016年に韓国ではじめて報告されましたが、欧米ではほとんど認知されていません。眼軸が伸びることで進行する近視と同様に、アジア人に起こりやすいと考えられています。
すでに日本でも問題視されており、テレビの健康番組やネットニュースでも取り上げられることが増えています。

「デジタルデバイス──特にスマホを見るときの距離はとても近くて、お子さんの場合は目との距離が20〜15cmになっていると思われます。その近さで動画やゲームの画面を見続けていると、どうしても目が内側に寄った状態でロックオンされてしまうのです。
でも、誤解しないでほしいのですが、スマホを常用していたからといって、誰もが内斜視になるわけではないということです。“内斜位”といって、もともと目が寄りやすい体質のお子さんが、スマホなどのデバイスを近い距離で見続けていると、斜視が悪化しやすいと考えられます。それでも、スマホ内斜視のお子さんが増えていることは、ふだんの外来診療からも明らかです」(宇井先生)
大人の内斜視の場合は、寄り目になるだけでなく、“両目で見たときに、ものが二重に見える”などの症状を訴えることもありますが、子どもの場合は順応性が高いために、目の疲れや不便を感じないことも多いのです。まわりの大人が、スマホを使いすぎないように声をかけるとともに、子どもの目の位置やものの見かたを注意深く観察することが必要でしょう。
「スマホ内斜視」の予防ですが、この2つを実践してみてください。
①まずスマホなどのデバイスと目との距離を離すこと。できれば50cm以上離して見るようにします。
スマホを持ったまま肘(ひじ)を腰に当て、離さないのがコツです。
②そして、30分見たら5分以上は休憩して、スマホの使用を中断しましょう。
眼科では、上記のスマホの使い方を指導するとともに、眼球を固定している筋肉を調整する手術や、ボツリヌストキシンという神経毒素(いわゆるボトックス)の注射で目の筋肉の動きを阻害してまっすぐな視線に戻す治療を行うなど、症状に応じた治療を行います。予防もしっかり行いつつ、少しでも心配な症状があれば眼科を受診ましょう。
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