小児のコンタクトレンズ
子どもがコンタクトレンズを入れても大丈夫?
できればメガネはかけたくない
近視や乱視などが進んで視力矯正が必要だけれど、「できればメガネはかけたくない」となると、コンタクトレンズを検討することになりますが、―――そもそも、子どもが使っていいものなの?
―――何歳ぐらいからなら使えるの?
―――ハードとソフトってどっちがいい?
など、わからないことが多いですよね。
CS眼科クリニック院長の宇井牧子先生に、子どものコンタクトレンズについてのそんな疑問に答えていただきました。
まずは、コンタクトレンズの推奨年齢から。
「近視を矯正するためのコンタクトレンズに関して、私のクリニックでは基本的に中学生以上としていて、小学生にはすすめていません。やはり取り扱いがむずかしいからです。でも、実際には小学生でもコンタクトレンズを使っているケースを見かけます。野球やバスケットボールなどをやっているお子さんが、“メガネだと危険だから”という理由でコンタクトレンズを希望することが多いですね」
さらに、わが子がコンタクトを使うことになった場合、ソフトとハードのどちらを選んだらいいのでしょうか。親御さんの中には、自分自身もコンタクトレンズの使用歴が長くて、「ハードレンズのほうがコスパがいい」「私も2ウィーク(2週間の使い捨てレンズ)だから、子どもも同じでいいのでは」と考える人もいるのでは?
コンタクトレンズには、大きく2つのタイプがありますが、それぞれの特徴をまとめてみました。
- ハードコンタクトレンズ
- 素材:名前の通り、硬い素材でつくられている。
- 大きさ:角膜(黒目)の一部を覆う程度のサイズ(小さい)。
- 耐久性:破れにくく、耐久性は高い。
-
- メリット
- ・高い度数や乱視にも対応できる。
- ・コスパがいい。
- デメリット
- ・入れたときの違和感や、出し入れなどの取り扱いに慣れるまでに時間がかかる。
- ・ズレたり、脱落したりしやすい。
- ・長期間使用することが多いので、洗浄などのレンズケアが必要。
- ソフトコンタクトレンズ
- 素材:水を含むことで軟らかくなる素材が用いられている。
- 大きさ:角膜全体を覆う程度のサイズ(大きい)。
- 耐久性:破れやすく、耐久性は低いが、使い捨てタイプでは問題ない。
-
- メリット
- ・違和感が少なく、ズレたり脱落したりしにくい。
- ・1日使い捨てタイプや、2週間使い捨てタイプなど、いろいろなタイプから選べる。
- デメリット
- ・矯正力や耐久性はハードコンタクトレンズにくらべてやや劣る。
- ・違和感が少ないため、目に何か障害が起きているときに気づきにくい。
- ・重度の乱視を矯正することができない
- ・ハードレンズよりもコスパが悪い。
「私のクリニックでは、子どもさんのコンタクトレンズは1日使い捨てソフトレンズの、いわゆる“ワンデー”タイプ一択にしています。その理由は、たとえ中学生であってもレンズの手入れや管理はむずかしいことに加え、何よりも、いい素材のレンズを選べば酸素の透過性が高いからです。
ご自身がコンタクトレンズを使っている親御さんは、お子さんのレンズも費用重視で選びがちです。
でも、これから長い人生を過ごすお子さんの目の健康を考えたら、少しでも目に負担が少ない、酸素の透過性がいいレンズを選んであげてほしいと思うのです。もちろん、UVカット機能がついているレンズもあります。高品質の使い捨てレンズは、そうでないものにくらべてコストはかかりますが、それだけのメリットはあると考えてください」(宇井先生)
コンタクトレンズを希望する場合、レンズを購入する代金は自費になりますが、度数や目に合うレンズのタイプを決めるための検査には、保険が適用されます。コンタクトレンズを扱っている眼科であれば、レンズを交付(眼科クリニックで購入すること)してもらうことができます。
また、コンタクトレンズを使うようになると、角膜がレンズで傷つくことによる角膜炎や、花粉などの付着によるアレルギー性結膜炎などが起きることもあります。定期的に、眼科の診察を受けるようにすれば安心です。
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