【子どもの近視治療のいまを語るVol.1】CS眼科クリニック 宇井 牧子院長 〈第1回〉

子どもの診療は未来を守る仕事。やりがいのある毎日が待っています!

子どもの診療は未来を守る仕事。やりがいのある毎日が待っています!

  • 眼科医の先生方へのメッセージのトップバッターは、東京都文京区で開業医として小児の診療に携わる宇井牧子先生です。近視進行抑制治療のやりがいと強み、そして医師不足の悩みについて語ってくださいました。

小児の近視進行抑制治療の急速な進歩

この数年で、近視の進行抑制治療が大きく変化していることは、先生方もよくご存知のことと思います。特に、COVID-19の感染拡大に伴うオンライン授業や外遊び時間の短縮の影響は大きく、アジア諸国では小児の近視の増加と低年齢化が顕著であり、大きな問題となっています。
近視の発症が早いほど強度近視のリスクが高く、強度近視に陥る可能性があるようなケースでは、将来的に緑内障や失明などに至る危険もあります。

(※グラフ1)

(※グラフ2)


本邦においては、近視は治療が必要な疾患とはみなされず、メガネやコンタクトレンズで矯正すれば十分、という時代が長く続きました。
また、学校健診で視力の低下を指摘されて受診する子どもには、「仮性近視」という診断で、トロピカミドとビタミンB12などの点眼薬が処方されていました。そして、成長とともに近視が進行し、メガネの度数が進んでいくのは当たり前のことだったのです。
眼科系の学会でも、小児の近視診療に関する演題はほとんど取り上げられず、近視を中心に扱う学会もなかったため、このテーマは置き去りにされてきました。

ところが、この数年で、小児の近視のほとんどは、眼軸が伸びることによる「軸性近視」であることに焦点が当てられ、シンガポールをはじめとするアジア諸国で、近視に関する研究が活発に行われるようになりました。そうして、眼科関連学会でも低濃度アトロピン点眼やオルソケラトロジー、あるいはその併用療法、光治療などによる治療の効果が報告され、小児の近視の進行を抑える治療のエビデンスが蓄積されつつあります。

小児の近視管理は、眼軸を測定することから

基礎眼科学の進歩と検査機器の研究開発によって、眼軸長を素早く正確に測定することが可能になり、近視の進行要因が明らかになってきました。
ここで説明するまでもなく、眼軸長の測定は白内障手術の眼内レンズ度数を決定するために必要な検査であり、光干渉眼軸長測定器の普及も白内障手術の増加に伴うものです。
小児の近視治療においては、光干渉眼軸長測定器を用いて定期的に眼軸長を測ることによって、近視の進行を予測・管理し、患者様に治療法を提示しています。

白内障や緑内障、網膜硝子体といった花形の専門に比べて、小児眼科は儲からないというイメージをお持ちの先生方が多いと思います。
たしかに小児の診療では、手間も時間もかかることは事実です。近視の管理では定期的に眼軸を測る必要があるうえ、省スペースの視力検査表は適さない面もありますから、ある程度の検査スペースと検査機器が必要です。
そして、子ども相手の検査やオルソレンズの装用指導などは、大人より手間と技術を必要とするため、スタッフの教育も必要ですし、人件費もかかります。

先生方の小児眼科の診療のイメージを、私のなかでは密かに“3M”と呼んでいます。
3Mとは、「面倒くさい、儲からない、報われない」の3つです。
しかし、本当にそうでしょうか?
近視治療は自費診療ですし、対象となる患者様の数は非常に多いのです。近視について患者様に等しく情報提供し、希望なさる方に進行抑制治療を行えば、患者様の数は必然的に増えていきます。そして、通ってくるお子さんたちは近視の進行を抑えることができるのですから、しっかり報われます。
「先生、メガネなしでよく見えるようになりました!」と、患者様が親子で喜んでくださるとき、私は医師として心からやりがいを感じます。

CS眼科クリニック 宇井 牧子院長

人気記事

近視は治らない?

子どもを近視から救う?専門医が話す最新治療5選

  • ちなみに、メガネあるいはコンタクトレンズを使って、遠くのものにピントが合うようにすることはもちろん可能です。医学的には“屈折矯正”といいますが、それはあくまでも対症療法であって、近視の原因を取り除くものではありません。それどころか、かえって近視を悪化させてしまうケースがあることもわかってきました。 近年、広く行われるようになっている“レーシック手術”も、やはり対症療法の
  • 子どもを近視から救う?専門医が話す最新治療5選

近視の治療最前線

世界注目の近視の進行を抑える方法とは?〈前半〉急増している子どもの近視。治療のタイミングを逃さないで!

  • 点眼薬による近視の進行抑制治療 子どもの近視に関する研究は、特にアジア各国でさかんに行われています。日本をはじめ、韓国や中国などでは幼少期から近視になる子どもが多く、臨床研究でも、世界をリードしています。なかでもこの数年でさかんに行われるようになったのが「低濃度アトロピン」という点眼薬による近視の進行抑制治療です。 近視は、「眼軸(目の奥行きの長さ)」が伸びるこ
  • 世界注目の近視の進行を抑える方法とは?〈前半〉急増している子どもの近視。治療のタイミングを逃さないで!

関連記事

小児のコンタクトレンズ

子どもがコンタクトレンズを入れても大丈夫?何歳から?ソフトレンズorハードレンズ?

  • できればメガネはかけたくない近視や乱視などが進んで視力矯正が必要だけれど、「できればメガネはかけたくない」となると、コンタクトレンズを検討することになりますが、―――そもそも、子どもが使っていいものなの?―――何歳ぐらいからなら使えるの?―――ハードとソフトってどっちがいい?など、わからないことが多いですよね。
  • 子どもがコンタクトレンズを入れても大丈夫?何歳から?ソフトレンズorハードレンズ?

【子どもの近視治療のいまを語るVol.1】CS眼科クリニック 宇井 牧子院長 〈第2回〉

眼科医、視能訓練士の方々へ。小児の近視治療に関心のある先生、大募集中!

  • 小児の近視治療は“永遠のサブスクプラン”これだけ小児の視力低下が問題視されると、親御さんたちはなんとかして我が子の近視の進行を食い止めたいと必死です。今はインターネットで誰でも最新の情報を手にすることができる時代ですから、検索して近視治療を受けられるクリニックを探すのですが、まだまだ小児の近視抑制治療に対応できる施設は少なく、やはり首都圏や大都市に限定されてしまうのが現状で
  • 眼科医、視能訓練士の方々へ。小児の近視治療に関心のある先生、大募集中!

PAGE TOP