【子どもの近視治療のいまを語るVol.1】CS眼科クリニック 宇井 牧子院長 〈第2回〉
眼科医、視能訓練士の方々へ。

小児の近視治療は“永遠のサブスクプラン”
これだけ小児の視力低下が問題視されると、親御さんたちはなんとかして我が子の近視の進行を食い止めたいと必死です。今はインターネットで誰でも最新の情報を手にすることができる時代ですから、検索して近視治療を受けられるクリニックを探すのですが、まだまだ小児の近視抑制治療に対応できる施設は少なく、やはり首都圏や大都市に限定されてしまうのが現状です。近視の治療は継続して通院することが必要ですから、遠方まで通院する患者様もいる一方で、治療したいのに、現実には通院できる範囲に施設がなくて、治療をあきらめざるを得ないという声も多く聞きます。
実際に、私のクリニックでも、小児の患者様の多くは、県をまたいで時間と交通費をかけて通院してくださっています。
近視の進行を抑えるための治療は保険が適用されませんから、全て自費の治療です。親御さんの経済力や治療に関する知識と情報力、意識の高さが必要な治療だと思います。しかし、近視が進行する年齢のときに治療をした場合としなかった場合とでは、将来的に大きな差が生じることは明らかです。
身長が伸びるように、眼軸が伸びて近視が進行する18歳前後までは、定期的に通院して経過を診ることが必要ですから、ある意味、小児の近視治療は“永遠のサブスクプラン”ともいえるのではないでしょうか。通いやすい場所に近視治療を行う眼科があれば、必然的にその眼科が選ばれ、長く定期的に通ってくれるはずです。
小児の眼科診療にもさまざまな疾患があり、小さいお子さんにとって恐怖や痛みを伴うような散瞳下眼底検査や涙道ブジーなどの検査や処置を行う場合には、小児歯科における虫歯の治療などと同様、お子さんが暴れないように抑制帯などの器具が必要になります。さらに、看護師が頭をしっかり押さえて安全を確保したうえで処置を行います。
しかし、近視の治療だけであれば、そのような器具や手術のための特別な設備・技術は必要としません。現時点では、低濃度アトロピンとオルソケラトロジー、多焦点ソフトコンタクトレンズで治療が成立し、これらはすべて自費診療となります。
クリニックのスタッフもやりがいを感じることが強み
近視治療を行っていてなによりもありがたいのは、施設のスタッフ——特に視能訓練士さんたちのモチベーションが非常に高いことです。オルソレンズの装用指導などのノウハウ、テクニックは、私などまったく彼らに及びません。高齢の患者様が中心で、ひたすら経過観察して点眼薬を処方するだけの診療が続くと、クリニックのスタッフは張り合いがないために、向上心も薄れ、離職率が高いという話も聞き及びます。
ありがたいことに、当院には、小児の治療に関心を持つ視能訓練士さんたちが、口コミやウェブサイトを見て集まってくるようになりました。今では、他施設で常勤で働きながら週に1日程度、うちのクリニックに勉強しに来るという非常勤のスタッフもいて、のべ15名以上の視能訓練士で外来をまわしています。
治療を希望する患者様は増えているのに、小児の近視を診られる眼科の先生の絶対数が足りていません。当院も口コミなどで患者様が増え、定期的に通院が必要であるため、ついに新患の予約が取りづらい状態になってしまいました。
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子どもの未来を守る医療に携われることで、私が日々、感じているこの喜びを、ひとりでも多くの先生に体験していただきたいと願っています。
CS眼科クリニック 宇井 牧子院長
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