近視に乱視が重なると、視力の発達にも影響する!?
子どもにもある「乱視」。
将来の視力に大きく関わってくることも!
子どもの視力の異常には「近視」と「遠視」だけでなく、「乱視」もあります。大人なら乱視のメガネをかけている人はめずらしくありませんが、子どもの乱視は家庭で見つけることがむずかしいうえに、そのまま放置しておくと、将来の視力に大きく関わってくることも!日々、子どもの視力の診療にたずさわるCS眼科クリニック院長の宇井牧子先生に、子どもの乱視についてうかがいました。
「近視の場合は手前にピントが合いますが、乱視のある目はピントの合う場所がないので、ものがくっきり見えず、二重に見えたり、にじんで見えたりする状態です。近視に乱視が重なると、像がぼやけているうえに二重に見えるため、裸眼視力はガクンと落ちてしまいます。特に、小さいお子さんの場合、乱視があるとわかったら、しっかりメガネをかけて視力を矯正しないと、将来的に弱視(何らかの原因で、視力が正常に発達しないこと)になることもあるので、気をつけてほしいのです」
家庭でも気づくことができる“子どもの乱視のサイン”ってあるのでしょうか。
「乱視がある場合、大人なら“パソコンの文字が二重になって見えにくい”とか“目が疲れて肩が凝る”などの自覚症状がありますが、小さい子どもの場合はよく見えているのか、見えていないのかを自分で判断することができません。目を細めてものを見る、顔をかたむけて見る、横目で見るなどのクセに気づいたら、学校の健康診断で指摘されていなくても、眼科できちんと視力検査をしてもらってください」(宇井先生)
では、わが子に乱視があると診断された場合、どのように対処するのでしょうか。
そもそも乱視の目はどうなっているか、解説しましょう。
目の角膜(黒目)は正面から見ると丸く見えますが、誰もが完全にまん丸(正円)ではなく、わずかに楕円(だえん)になっているものです。乱視はその程度が大きくて、角膜を通して合うはずの焦点(ピント)が網膜にしっかりと合わない状態です。
乱視がある目の角膜(黒目の部分)は楕円体になっています
近視は眼軸(目の奥行き)の長さが長いこと、遠視は眼軸の長さが短いことによって起こるため、近視の場合は成長とともに眼軸が伸びて進むことがあります。したがって、近視の進行を抑えるためには、眼軸が伸びないように「低濃度アトロピン点眼液」などで治療する必要があるのです。
一方、乱視は黒目の形によって起きるものです。眼軸に影響される近視や遠視とちがって、大きく変化することはほとんどないのですが、乱視をなくすことはできません。
子どもの乱視は、メガネをかけて矯正するのが基本です。ある程度の年齢になったら、乱視のタイプによっては乱視用のコンタクトレンズが適している場合もあります。
お子さんの視力が健全に発達していくために、上記のような乱視の基礎知識を覚えておいてくださいね。
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