近視予防の治療を上手に継続するポイントとは

近視予防の目薬管理を、子どもに任せても大丈夫?

近視予防の目薬管理を、子どもに任せても大丈夫?
画像素材:PIXTA

治療を上手に継続するコツ

近視の進行を抑えるために、低濃度アトロピン点眼薬による治療や、オルソケラトロジーとの併用治療を受けているお子さんは、治療が長期に及ぶこともめずらしくありません。そのため、年齢が上がって小学校高学年〜中高生になると、幼児期にはなかった問題が生じる場合もあります

“学校の宿泊行事のときにも目薬を持たせるの?”  “部活の合宿のあいだ、目薬やレンズの治療を休んでも大丈夫?”  “そろそろ、子どもに目薬の管理を任せてもいい?”といった疑問を抱く親御さんが増えるのは、無理もないことですね。
近視予防の目薬管理を、子どもに任せても大丈夫?
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子どもの視力に関する診療にたずさわるCS眼科クリニック院長の宇井牧子先生も、日々の外来診療のなかで、大きい子どもたちが治療を継続することのむずかしさを感じているといいます。

生活のすべてを親御さんが管理していた年齢を過ぎると、少しずつ身のまわりのことを自分で管理するようになってくるわけですが、点眼薬治療やコンタクトレンズの装用もそのひとつだと思っています。

個人差はありますが、コンタクトレンズの装用と同じように、一般的には、中学生になったら毎日の点眼薬治療もお子さんが自分で管理できるようになると考えていいでしょう。特に女の子の場合、小学校中学年くらいからオルソケラトロジーのレンズを入れたり、目薬をさしたりすることを自分でするお子さんもいるのですが、やはり親御さんが声かけをしながら少しずつ任せていったほうがいいでしょう。」
近視予防の目薬管理を、子どもに任せても大丈夫?

また、宇井先生は、治療を上手に継続するコツとして「あまり神経質にならないこと」を挙げてくれました。

「通院しているお子さんたちは、定期的に眼軸(目の奥行き)の長さを計測しています。身長の伸び方がゆるやかになる中学生の年齢になれば、眼軸の伸びも同様なので、点眼薬による治療を終了したことによって急に近視が進むことはないと思います。

患者さんにたずねられたら、“学校の宿泊行事や部活の合宿などには、目薬やオルソケラトロジーのレンズは持たせなくていい”とお答えしています。紛失や破損を避けるためです。点眼するのを1日忘れたからといって神経質にならないことが、長期継続のコツかもしれません」(宇井先生、以下同)

点眼薬による治療は、オルソケラトロジーと違い、“よく見える”という実感がないため、ドロップアウトしやすいのですが、継続することが大事です。

低濃度アトロピン点眼薬やオルソケラトロジーによる治療が行われるようになってから、まだ数年しか経過していないにもかかわらず、各国の研究において、これらの治療をしたグループのほうが、治療しなかったグループと比べて近視が進まなかったという結果が出ていることは確かな事実です。

近視が抑えられるという実感はなくても、将来の近視度に差がつくことをお子さんともよく話し合いましょう。そして、それぞれに合うやり方で、目薬の治療を自分で管理できるようにしていけるといいですね。

さらに、低濃度アトロピン点眼薬による近視抑制治療を続けるうえで、各家庭で気をつけたい点をうかがいました。
近視予防の目薬管理を、子どもに任せても大丈夫?
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「兄弟姉妹で同じ目薬を処方されていても、1本の目薬を共有しないこと。細菌感染などのリスクがあるだけでなく、残量もわからなくなくなります。必ず容器に名前を書いて、別々に管理するようにしてください。

もうひとつは、低濃度アトロピン点眼薬には、“残っている薬の量がわからない”という注意点があることです。容器が透明で中身の薬液が見える日本の点眼薬とは違い、白い容器に入っていて、残りがまったく見えないからです。患者さんは、薬液が残っていないことに気づかず、 “急になくなった!”と感じるようです。毎日、継続して点眼できるように、開封していないものが1本残っているくらいのタイミングで受診して、次のお薬を処方してもらうようにするといいでしょう」

最後に、宇井先生は「点眼薬の自己管理を、お子さんの自立のきっかけととらえる」ことも提唱してくれました。

「性別や性格によって差はありますが、小学校高学年くらいになったら、お子さんが1日1回の低濃度アトロピン点眼薬を忘れずに自分でさすことができるようにサポートしてあげましょう。まわりの大人はそれを見守り、確認してあげてください。目薬の自己管理という小さなことでも、お子さんが自立するための、ひとつのツールになり得ると思います」


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