統計的に初めて証明された、子どもの近視の実態

近視の進み具合が、小学6年生と成人で同じに!?!

近視の進み具合が、小学6年生と成人で同じに!?!
画像素材:PIXTA

『児童生徒の近視実態調査』

小学6年生の近視の進み具合が、成人と同じに。そんなまさかと思う方もいるかもしれませんが、これ、文部科学省が6月に公表した『児童生徒の近視実態調査』で、近視の原因とされる「目の奥行きの長さ」(眼軸長)の伸展の度合いからわかった事実です。

今回わかった子どもの眼軸長の伸展の度合いは、予想されていたこととはいえ衝撃的です。私のような臨床の眼科医が、日常の診療を通じて肌で感じていたことが、統計的な数値ではっきり表れているわけですから」
と話すのは、兵庫県で新見眼科など5軒の眼科医院を運営する医新会理事長・新見浩司先生です。


これまでも小中学校の児童生徒に対しては、毎年の春と秋に、通常の視力検査がおこなわれてきました。
検査結果が統計として残されている1979年度以降、子どもの平均視力は一貫して右肩下がりで、特に近年は子どもを含む現代人の近視が“パンデミック”とも呼べるほど深刻な状況になっていることは、すでに本サイトの別記事でも紹介したとおりです。
しかし、近視に直結する角膜や水晶体の“屈折力異常”角膜頂点から網膜までの長さを示す“眼軸長の伸展”は、測定に専用機器が必要なため、これまで学校では大規模な調査がされてきませんでした。
そうした実情を受け、文部省は昨年、子どもの近視に関する初の大規模実態調査に乗り出します。
今回ご紹介する子どもの平均眼軸長は、その調査結果にもとづくものなのです。

調査は、全国から選ばれた29校の小中学生8607名を対象に、2021年4~12月に実施。従来の視力検査に加え、眼の屈折異常調査と、眼軸異常調査がおこなわれました。

このうち、近年では屈折異常よりも近視の直接的な要因になっているということで注目される眼軸長に限って見てみると、平均値は以下のようになっていました。
  • 小学1年生

    男子22.96ミリ
    女子22.35ミリ
  • 小学6年生

    男子24.22ミリ
    女子23.75ミリ
ちなみに日本人の大人の眼軸長は平均24ミリ。
つまり今回の実態調査によって、小学6年生の眼軸長が、大人の平均とほぼ同じにまで伸びているということがわかったのです。
近視の進み具合が、小学6年生と成人で同じに!?!
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眼軸長は体の他の部位と同様、体格と比例して長くなることが知られています。
簡単に言えば身長が伸びればそれに比して眼軸長も伸びるので、この数値は正常な成長を示しているだけなのではないかと思われるかもしれません。

しかし文部科学省による令和2年度の『学校保険統計調査』によると、小学生6年生の平均身長は、男子146.6センチ、女子は148.0センチにすぎません。
つまり現代の小学6年生は、体はまだ小さいのに眼軸長が大人並みに伸びてしまっている、イコール“近視が進んでいる”状態である
ということができそうなのです。

今回の実態調査は測定数値の公表にとどまり、その要因の分析までには及んでいません。
そこで、運営する眼科医院で毎年計25校もの学校に出務し、たくさんの子どもたちの目を診ている新見先生に再び、この調査結果が意味することを尋ねてみました。

「初の大規模実態調査なので、比較対象となる過去の同規模のデータがなく、推測の域を出ませんが、子どもの眼軸長はやはり近年になって想像以上に伸びているのではないかという印象です。
屋内でデジタルデバイスに夢中となり、何時間もYouTubeを見て過ごすような毎日では、視力が悪くなって当然なのかもしれません」
近視の進み具合が、小学6年生と成人で同じに!?!
画像素材:PIXTA

1日平均2時間以上、太陽光に含まれるバイオレットライトを浴びると良いと言われていて、屋外活動ができている子は近視が進みにくいのに……とも言う新見先生。
現在はコロナも心配、熱中症も心配で、なかなかそうもいかない状況であることはわかりますが、なんとかこのへんで食い止めなければならない状況であるということも、今回の調査結果からわかっていただけたのではないでしょうか。

〈参考文献〉
新見浩司・監修『お医者さんがすすめる視力回復 本物の「目の体操」7日間メニュー』(2013年、リンケージワークス)

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