近視は治らない?

子どもを近視から救う?専門医が話す最新治療5選

子どもを近視から救う?専門医が話す最新治療5選
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「先生、ウチの子の近視、治りますよね?」

こどもの近視の相談で眼科を受診したお母さん、お父さんが、診察室で医師に必ず投げかける質問です。スマホや電子ゲームを使い始める子どもの低年齢化、そしてコロナ禍でのオンライン授業などで、子どもたちも目を酷使する時代になり、目が悪くなるこどもが増えています。

残念ながら、いったん近視になってしまうと、進むのを遅らせることはできるのですが、根本的な治療は難しいのが現状です。しかし、近視のメカニズムが解明されるとともに、進行を抑える治療も国内外で研究されてきました。2022年現在、医療機関で行われている最新の治療法は、おもに次の5種類です。
  • ① 低濃度アトロピン点眼液

    0.01%または0.025%の低濃度のアトロピンを点眼する
  • ② オルソケラトロジー

    就寝中のみ、特殊なハードコンタクトレンズを装用する
  • ③ 多焦点ソフトコンタクトレンズ

    大人の老眼に用いる遠近両用のソフトコンタクトレンズを装用する
  • ④ 累進屈折力メガネ

    大人の老眼に用いる境目のない遠近両用メガネを装用する
  • ⑤ 低濃度アトロピン+オルソケラトロジーor 多焦点ソフトコンタクトレンズor 累進屈折力メガネの併用療法

    ①の治療に②・③・④を併用する
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子どもの視力に関する診療と研究をライフワークにしてきた、医学博士・眼科専門医 木下望先生は、「小さい子どもを持つ親御さんには、近視のことを正しく知ってほしい」と強調します。

「 “学校の健康診断で視力の低下を指摘された”“テレビや本を見る距離が極端に近くなった”などの受診動機で眼科を訪れるこどもたちの親御さんのほとんどは、治療すれば視力が回復すると考えているようです。しかし、残念なことに、子どもの近視のほとんどを占める“軸性近視”は、現代の医療を駆使しても、進行すると元に戻すことができないのです」

これはショック! ちなみに、“軸性近視”とは、“眼軸長”という目の奥行きの長さが伸びることによって、遠くのものに焦点が合わなくなった状態です。いったん伸びた“眼軸長”は、短くすることができません。

眼断面図


「現在、行われているこれらの治療法も、そのお子さんの目の状態が適応かどうかの条件があるうえ、費用と親御さんのサポートが必要です。しかし、近視はとにかく進行させないことが重要です。お子さんの近視治療に関心がある親御さんは、ぜひお早目に眼科専門医に相談してください」(木下先生、以下同)

今の子どもたちのご両親や祖父母の子ども時代には、目が悪くなると目薬をさしたり、視力回復のためのトレーニングをさせられたりした記憶があるのではないでしょうか。あれって、医学的な根拠がなかったということ?

「医療・医学の進歩はめざましく、新たな治療薬が開発されるなどして、数年前には治せなかった病気が完治するようになった例も少なくありません。

しかし、子どもの近視に関しては、逆に検査機器の開発が進んで、近視になる原因がわかったことによって、20世紀までの古い考え方が否定されました。人間の“眼軸長”を簡単に測ることができるようになったからです。

実は、わたし自身も中学に進学する頃から近視になって、あっという間に0.1に進み、遠くを見るトレーニングなどを実践しましたが、近視は治りませんでした。眼科医になって近視のメカニズムを研究するようになり、それらが無効だったことがわかりました。

今や、子どもの近視治療のトレンドは、“眼軸長”が伸びるのを抑えて、“軸性近視”の進行を遅らせるための治療なのです」
子どもを近視から救う?専門医が話す最新治療5選
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ちなみに、メガネあるいはコンタクトレンズを使って、遠くのものにピントが合うようにすることはもちろん可能です。医学的には“屈折矯正”といいますが、それはあくまでも対症療法であって、近視の原因を取り除くものではありません。それどころか、かえって近視を悪化させてしまうケースがあることもわかってきました。

近年、広く行われるようになっている“レーシック手術”も、やはり対症療法のひとつです。

お子さんの大切な目を守るために、あとになって後悔しないために、あなたもぜひ“軸性近視”について知っておいてください。

〈参考文献〉
木下 望 『近視から子どもたちの目を守れ! 近視と闘い続けた眼科医からのメッセージ』(2021年、幻冬舎)
平岡孝浩・二宮さゆり編『クリニックで始める 学童の近視抑制治療』(2021年、文光堂)
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